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cortina d'ampezzo & val di fassa

コルチナダンペッツォ

ヴァル・ディ・ファッサ

迫る岩壁 果てしなく連なる急峻な岩山 世界最大のコース総延長1200km、12のエリアを滑るコルチナダンペッツォ&ファッサ

DOLOMITI  CORTINA D’AMPEZZO & VAL DI FASSA   コルチナダンペッツォ&ヴァル・ディ・ファッサ

氷河に削られた断崖絶壁、滑走中見渡すたびにその表情が変わります。世界遺産ドロミテの岩山が果てしなく連なる様は圧巻。世界最大のコース総延長1200km、12のエリアを1枚のリフトパスで滑走できます。イタリア特有の完璧にグルーミングされた斜面とドロミテ山群の絶景をお楽しみください。滞在のコルチナは2021年のアルペン世界選手権の開催が決定、さらに2026年のオリンピックにも立候補し、ウィンタースポーツの中心地として存在感を増しています。

CORTINA AREA
ドロミテエリアを効率的にご案内

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広大なドロミテ12のエリアを便利な専用車を利用しご案内します。コルチナ周辺のファローリアやトファーナ、展望台と馬に引かれるのが楽しいラガツォーイ、ドロミテのメインイベントのセラロンダ。他にも垂直壁の美しいチベッタや混雑の少なく滑れるセスト、滑り派に人気のクロンプラッツなど天候に応じて柔軟にご案内します。さらに今シーズンよりコルチナとドロミテ北西部ブリクセンに滞在するツアーも新しくラインナップに加わります。

セラロンダ

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数あるドロミテスキーサファリの中で、一番人気のセラロンダでは、リフト・ゴンドラ設備を乗り継ぎ、セラ山塊をスキーで一周します。人気の秘密は、素晴らしい景観はもちろん、それが目の前で次々と展開していく面白さと完走したときの達成感です。1日がかりの一大イベントですが、中斜面でパラレルができ1日滑り続けられる体力さえあれば、どなたでも参加できます。ぜひ、お気に入りのワンショットを見つけてください。

ラガツォーイ

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ラガツォーイはコルチナ周辺で滑走エリアとして1番標高の高い場所。標高2,700mを超える展望台からはコルチナの街を始め、ドロミテ最高峰マルモラーダ、ドロミテの王様アンテラオ、翼を広げた名峰チベッタなどが一望できます。人工物の一切ない大雪原を一気に滑り降りるコースも素晴らしい心地です。最後は馬に引っ張ってもらうホースタクシーも体験でき、見所満載の1日になるでしょう。トファーナ

トファーナ・ファローリアクリスタッロ

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アルペンスキー女子W杯のダウンヒルとスーパー大回転が毎年行われる名門コース。もちろん、初級~中級者向けのコースもありますのでご安心ください。ロープウェイを2つ乗り継いだ先にある展望台レストランでは目の前にコルチナエリアの雄大な山々をお楽しみいただけます。展望台の裏側にはデントロ、メッツォ、ローゼス、のトファーナ三山が待ち構え、これまで積み上げてきた地層も確認することができます。

クリスタッロ

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ファローリアで足慣らしをしてからそのまま移動もできるクリスタッロ。イタリア・アルペンスキーの英雄、アルベルト・トンバが幼少期に数多く練習したコースとしても知られています。クリスタッロ山頂に向かって伸びるリフト下のコースはそのトンバにちなんで「トンバコース」とも呼ばれています。そのコースを見守るようにして、両側にそびえ立つ岩山は今にも倒れてきそうな程の迫力を楽しむことができます。

コルチナの街

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 高級リゾートでありながら、どこか落ち着いてのんびりした雰囲気もあるコルチナの街。おしゃれな商店街では品のいいブランドショップが立ち並び、素朴な民芸品や地元の食品などお土産選びにも困りません。街の中心では、ドロミテの王様アンテラオをバックにドロマイトでできた白く美しい鐘楼から鐘の音が時を知らせます。

VAL DI FASSA AREA
ドロミテ西部の個性豊かなスキーエリアを滑りつくすファッサ滞在

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ファッサ渓谷に佇む静かな街ヴィーゴ・ディ・ファッサに滞在し、周辺に点在する個性豊かなスキーエリアを滑走します。カティナッチョ、カレッツァ、サンマルティーノ、トレヴァリエリアなど様々なドロミテ山塊の雄姿が楽しめます。逆周りのセラロンダ、そして2年前にできたアルバのロープウェイのおかげでマルモラーダ~ホテルまでのファッサスキーサーカスが可能となりました。毎日、専用車でご案内しますので、楽にスキーエリアに行けるのも人気の理由です。

トレヴァリエリア

ファッサから専用車で約20分のサンペレグリーノは幅広いコースが多く点在しファミリーから上級者まで楽しめるスキー場です。近くには緩中斜面中心のアルペ・ルジアスキーエリアもあり、1日に両エリアを滑りきるのも滑り派にはおすすめです。

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スキー場 DATA

  • スキーパス 6日
    294ユーロ
  • シニア料金

    265ユーロ(65歳以上)

  • リフト・ゴンドラ数
    460 基
  • コース総延長距離
    1266 km
  • 最大標高差
    1823 m

コースレベル

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5

コースレイアウト

ホテルトリエステ

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ルアッティファミリーが温かいおもてなしで迎えてくれるアットホームなホテル。今年は完全リニューアルを施しさらに快適な滞在を提供します。フェロースタッフが常駐しているので安心で、ホテル前にはミニスーパーもあり便利です。

ホテルコロナ

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オーナーのホスピタリティ、毎年変わらないスタッフの顔ぶれ、第二の故郷に戻ってきた気分になります。ホテルの人々、部屋、ラウンジ、食事、スパ設備、全てがそろった4星Sホテルです。毎日スキー後の無料アフタヌーンティータイムは最高です。

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cortina d'ampezzo & val di fassa のおすすめポイント

景観よし、滑ってよしのイタリア山岳リゾート

イタリアで海外スキーに行きたい!という方に強くお勧めしているのがドロミテでの滞在です。東西に広く伸びるドロミテエリアはスキー場の総延長が1,220kmと世界最大。その中でも一番のハイライトがセラ山群の周囲を1日かけて巡るセラロンダ。ドロミテ東側に滞在するコルチナツアーでも、西側に滞在するファッサツアーでも必ず訪れるこのスキー遠足では、ツアーによって右回り・左回りと巡り方が異なり、コースも千差万別。同じコースを滑らないため、写真の撮り忘れにご注意を!

SKIERS VOICE(スキーヤーズ ボイス)

  • ドロミテ 『ciao!  Italia‼』

    『ciao! Italia‼』

    真冬のイタリア、コルチナダンペッツォでスキー。ドロミテの切り立った岩肌、広大すぎるゲレンデ、コンディションにも恵まれて、そこでしかできない特別なスキーができました。初めての海外でも安心して思う存分made in Italyを楽しめました。刺激を求める若い皆さんにもおすすめです!

    澤田 颯太様(東京都)

  • ドロミテ 夕食のひとときも楽しかったツアーの思い出

    夕食のひとときも楽しかったツアーの思い出

    3000m級の山々、広大なスキーエリアは壮観でした。アルベルト・トンバの写真が飾ってあるホテル・コロナは、食事が美味しくて毎日夕食が楽しみでした。参加者の皆さんと会話をしながらの夕食も楽しかった思い出の一つです。行ってみたいスキー場、まだまだあります!

    東 若葉様・好子様(東京都、奈良県)

「世界の雪の絶景」 コルチナダンペッツォ

ヴァル・ディ・ファッサ

スーパーセラロンダで 絶景のドロミテ山塊を滑り尽くす

スキーヤーなら人生で一度は訪れてほしい風景の宝庫が、北イタリアのドロミテ山塊である。2009年7月にユネスコ世界自然遺産に登録されてからは、世界各地からスキーヤー、ハイカー、ツーリストが訪れ、日本でも人気の地だ。

私がドロミテの地に魅了されてしまうのは、ひとつは壮大な地球規模の地質学的な成り立ち。ふたつ目は、古代ローマ帝国から中世のハンガリー・オーストリア帝国を経て、近代の2度の世界大戦の山岳戦争に大きな影響を受けて発展してきた歴史的、文化的背景である。そして最後は、スキー、トレッキング、サイクリング、ヴィアフェラータ(ワイヤーロープや梯子など固定された設備が整った山岳コースで行なう岩壁ハイキング)と、山岳スポーツのすべてを楽しめるエリアであることだ。これらのスポーツを多くの人々がごく自然に楽しむ光景を、季節を問わずドロミテのあちこちで見ることができる。

天に向かってそびえ立つ 数々の奇岩。世界でも 〝ここだけ〞にしかない風景

ドロミテ山塊と言っても、ひと目見てわかりやすい名峰があるわけではなく、独自に造形された3、000㍍級の奇岩の山群の集まりである。また、現在では高峰の集まりだが、数千万年前までこの地は深い海の底にあった。

フランス人地質学者、デオダ・ドゥ・ドロミューが、この地への西側の入り口となるイサルコ渓谷で「ドロマイテ」を発見したのが1789年。これは、それまでアルプスでは発見されていなかったミネラル成分、おもにカルシウムやマグネシウム、カーボナイトを豊富に含んだ石灰石で、現在は亜熱帯気候に位置するバハマ付近の海底と同質なものだった。このドロマイテでできた山々ということから、この地はドロミテと呼ばれるようになった。

この地独特のドロマイテや石灰質のライムストーンは、数千万年前、海底火山が爆発した頃に幾重にも堆積した。そして約4、000万年前に始まったアフリカとヨーロッパの大陸プレートの衝突により隆起。その後、厚さ2、000㍍もの氷河が後退していくなかで、岩塊は垂直方向に裂け、岩肌がむき出し、天を突くように岩峰が連なる独特の風景が形造られたのである。

アルプスの南側に位置するドロミテからは、さまざまな方向へ渓谷が伸びている。東北部には、名峰クリスタッロ(3、221㍍)に沿って北に延びるコルチナ周辺のダンペッツォ渓谷があり、北側にはオーストリアへと続くプステリア渓谷やその支谷となるセスト渓谷が広がる。そして、中央部には西から北からセラ山群へ延びるガルディナ渓谷。これは湾曲してバディア渓谷へとつながり、ふたたびプステリア渓谷へと抜けている。一方、中世の通商ルートとして名高いボルツァーノからはエガ渓谷、カレッツァ湖、ポルドイ峠を抜けてから東北部へ約180㌔、コルチナ・ダンペッツォまでのドロミテ街道が縫うファッサ渓谷がある。さらに南チロルをインスブルック方向へと延びるイサルコ渓谷などがある。

ドロミテ山塊は一見同じような奇岩の山群だが、よく眺めてみるとそれぞれまったく違うことを発見できる。そんな山群を、この地にさまざまな方向からアプローチする渓谷やその裾野に広がるメドウから、夏には歩きながら、冬には滑りながら楽しむことができる。また、山頂付近にある展望台に足を伸ばせば、その風景を360度見渡すこともできる。

独特の形を持つドロミテ山塊とその周囲の渓谷、そして、その山麓に点在する山村や湖沼が織り成す風景は、アルプス広しといえども、ここだけのもの。まさに太古から大自然が腕によりをかけて造り出した芸術作品のような風景が広がる地、それがドロミテだ。

ドロミテ山塊と数々の渓谷を 滑りながら、絶景に触れる スーパーセラロンダ

名峰、シリアールとガルディナ方面

名峰、シリアールとガルディナ方面

ドロミテには12のスキーエリアがあり、総延長距離1、200㌔、リフト・ゴンドラが約450基を誇る。数々のワールドカップコースもあるが、ドロミテスキーの至極のぜいたくは、12のスキーエリアとその間の渓谷を滑り渡りながら、時間によって刻々と変化するドロミテ山塊の絶景に囲まれて滑るセラロンダに尽きるだろう。
 
広いエリアを滑りながら国境を越えたり、谷を中心に左右に広がるエリアを周回しながら滑ることができる場所は、世界のあちこちにある。名高いのは、ツェルマット(スイス)〜チェルビニア(イタリア)やレッヒ〜ツールス、ザールバッハ(ともにオーストリア)などで、サークルやリングと呼ばれている。

しかし、セラロンダはドロミテ山塊を東西南北、すべての渓谷をめぐりながら、約32〜60㌔以上にも及ぶスキー滑走。ドロミテの名峰群を満喫しながら、これだけのロングディスタンス滑降を楽しめる壮大なスキーは、世界を見渡しても、ここにしかないと言えるものだろう。コースマップでは、時計まわりがオレンジ、反時計まわりが緑で示されており、シーズンごとにインフラ整備も進んでいるので、ほとんどストレスを感じることなく、壮大なドロミテのスキーエリアを楽しむことができる。リフトやゴンドラではアクセスできない場所には、ドロミテバスが運んでくれ、その時間も身体を少し休ませるのには、ちょうどよいものになるだろう。

ここでは、私のプラスアルファも含めて、とっておきのスーパーセラロンダを紹介したい。

ドロミテの中心、コルバラまたはアラッバの村から時計まわりでスタート。アラッバのかつてのワールドカップコースを見ながら、ゴンドラかロープウェイでポルタ・ヴェスコヴォ山頂へ。標高差、約1、000㍍の滑り応えのある滑降コースを中間駅まで滑り降りたら、そこから南側へとリフトを乗り継いでマルガチャペラのマルモラーダゴンドラ駅までクルージング。ここでは、ドロミテの女王マルモラーダ(3、342㍍)の氷河を抱くプンタロッカ(3、309㍍)プンタペニヤ(3、343)を見上げながらの滑降を楽しめる。

マルガチャペラから3回ゴンドラを乗り継いでマルモラーダ山頂へ。急峻な岩肌とゴンドラがすれすれに通過するスリルを味わうのも一興だ。山頂に立ち東側を見渡せば、そこにはコルチナ方面の名峰トファーナ(3、243㍍)やドロミテ山塊の中央にそびえる台形が特徴的なセラ山群が迫る。セラ山群の山頂となるピッツボエ(3、151㍍)を見ながら、ファッサ渓谷の両雄であるサッソルンゴ(3、181㍍)、カテナッツォへと目を運び、ドロミテ山塊の全容を楽しんでもらいたい。一方、南側に目を移せば、ドロミテ山塊のもうひとつの象徴、サンマルティーノ山群が雲海のなかに浮かび上がる。マルモラーダが誇るプンタロッカ・プンタペニアの両峰と西側眼下の凍ったフェダイア湖までしっかりと目に焼きつければ、氷河に降り立っている緊張感と迫力ある壮大な風景を、一般的なセラロンダルートから離れて寄り道した自分へのご褒美のように感じられるはずだ。そうして景色を堪能したら、麓まで一気に約10㌔のダウンヒル。まだ、スーパーセラロンダは序盤にすぎない。

ふたたびアラッバゴンドラの中間駅まで戻ってからポルタ・ヴェスコヴォ山頂(2、562㍍)へ上がると、ちょっとした寄り道に要した時間の経過が、また違ったセラ山群の姿を楽しませてくれる。ここからは次なる目的地、ポルドイ峠をめざして滑るなかで、セラ山群の雄大さを実感してもらいたい。

ポルドイ峠に到着したらサボイア山岳ホテルへ。かつてポルドイ峠はオーストリア領だった。そして、サボイア山岳ホテルは、ハプスブルグ家最後の皇帝、フランツ・ヨーゼフ1世がよく立ち寄った地。その歴史をたたえる姿を、ぜひ堪能してもらいたい。

ポルドイ峠では一度スキーを脱ぎ、サッソポルドイ展望台(2、800㍍)へ向かうのもいい。ロープウェイで一気に展望台へ上がれば、先ほどのマルモラーダやサンマルティーノ山群が南側にその雄姿をのぞかせている。西側にはサッソルンゴやシリアール、カテナッツォという錚々たる名峰。さらに北側には、オーストリアの銀屏風、ツィラーターラーアルペンやオーストリアの最高峰、グロースグロックナー(3、798㍍)まで遠望することができる。北西にはスチューバイターラーアルペンやエッツターラーアルペン、北イタリア最大のアダメッロ氷河、オルトレス山塊が広がり、南西にはスイス・エンガディン地方の最高峰、ピッツベルニナ(4、049㍍)をはじめとするベルニナ山群と、ヨーロッパアルプスの心洗われる大パノラマが広がっている。 しかし、スーパーセラロンダはまだ半分にも満たないところ。絶景を心ゆくまで楽しんだらポルドイ峠まで降り、次なる目的地、サッソルンゴにほど近いセラ峠をめざす。その途中、ファッサ渓谷のカナツェイ方面から合流するコースに滑り降りてもいい。時間との勝負ながら、途中、渓谷に点在する山村まで滑り降りるのもスーパーセラロンダの醍醐味である。

ここまで午前中のスキー滑走としては、そうとうな移動距離になる。しかし、ランチを早めにすませて、中・急斜面が延々と続くサッソルンゴのワールドカップコースへと滑り込む。左手に雄大なサッソルンゴ、眼下にサンタ・クリスチーナ村を小さく見ながら折り返し点に向かって滑る喜びに浸れる瞬間だ。

トファーナスキーエリアから唯一の赤い山、クロダロッサ(赤い岩)を望む

トファーナスキーエリアから唯一の赤い山、クロダロッサ(赤い岩)を望む

サンタ・クリスチーナ村からはまた戻ってもよいが、さらにコルライゼル、セチェーダのゴンドラ、リフトを乗り継いでオルティゼー村まで約10㌔のノンストップスキーイングに挑戦。北東側にはガイスラー山群がそびえ立ち、岩と雪の絶景を織り成している。もう脚も限界かもしれないが、オルティゼーからゴンドラに乗り、さらにシウジ高原へ。そして、そこからはヴァル・ガルディナのセルバ村まで、もうひと息だ。

通常のセラロンダがセラ山群をめぐる円形移動なら、スーパーセラロンダはドロミテ山塊を走破する星形移動とも言えるもの。けっして楽ではないが、それを補って充分な満足感を得て、さらにドロミテの絶景の数々を楽しむことができる。それがスーパーセラロンダの知る人ぞ知る醍醐味なのかもしれない。

ちなみに、ここまで来ると通常のセラロンダは半分以上滑っている。しかし、ドロミテの絶景を総なめにするスーパーセラロンダは、まだまだ意外性を秘めている。続いて、ガルディナ渓谷とバディア渓谷が交わる十字路であるコルバラの村までと、その先のルートを紹介したい。それはスキーの機動力を最大に利用しながら、時々刻々と太陽の動きとともに変化するドロミテの絶景を味わうスキーである。

ドロミテの女王、マルモラーダも、見る角度によってさまざまな表情に

ドロミテの女王、マルモラーダも、見る角度によってさまざまな表情に

スーパーセラロンダの極み 真紅に燃えるドロミテの岩峰を望む

ドロミテの景色のすばらしさ 山群や渓谷の成り立ちを 滑りながら体感するスキーの旅

ドロミテスキーのハイライトとして人気の高いセラロンダと、その周辺のスキーエリアにまで滑り込むスーパーセラロンダについて、さらに紹介していきたい。
 
世界遺産ドロミテ山群の中心、セラ山の周囲には4つもの渓谷が広がり、総延長距離約1、200㌔ものスキーエリアを形成している。長い時間をかけて自然が造ったこの立体的な地形は、世界のスキーエリアでも類を見ないものだ。セラロンダは、そんな地形のなかを、1日約30〜50㌔、同じコースをまず2回滑ることなくめぐるスキー旅だ。リフトやゴンドラ、ロープウェイなど人工的な機動力が発達したからこそ、これだけの規模を効率よく滑り、刻々と変わりゆく景色を楽しむことができるのである。

セラロンダ中に見ることができるサッソ・デラ・クローチェ、ラバレッラ、コントリネスの3山

セラロンダ中に見ることができるサッソ・デラ・クローチェ、ラバレッラ、コントリネスの3山

セラロンダは20年以上前から存在していた滑走ルートだが、当時はシングルリフトやTバー、Jバーも多く、リフトの運行時間内に周回することだけに集中していた記憶がある。しかし現在の機動力の発展はめざましく、またよく考慮されているので、スキー滑走以外の時間、つまりリフトやゴンドラに乗っている約30㌔に要する時間も短くなっている。その技術の恩恵によって、一般的なセラロンダルートから外れて、周辺のスキーエリアへ足を伸ばすスーパーセラロンダが可能になっている。スーパーセラロンダは、景色のすばらしさ、ドロミテ山群とその周辺の渓谷の成り立ち、文化や歴史の違いを体感しながら、セラロンダを越えたスケールで滑ることを楽しむ「スキー滑走の旅」である。

ドロミテエリアを訪れるたびに驚か されるのは、季節を問わず、いつでも新しい発見に出会えることだ。スーパーセラロンダは、スキーだけではなく、トレッキングやマウンテンバイクなどでもできる。スポーツのスタイルを問わず、ドロミテエリアのさらに深い魅力との出会いを楽しむ旅、それがセラロンダを超えたスーパーセラロンダなのである。

通常のセラロンダコースを離れ 真紅に岩が燃える エンロサディーラ現象が美しい
サッソ・デラ・クローチェへ

セラロンダ滑走のひとつの「極み」として、ふたつのポイントを挙げてみたい。

ひとつは、ボルツァーノからエガ谷を経由してカレッツァ湖、ヴィーゴ村、カナッツェイ村を経て、ドロミテの灯台と言われるペルモまで誘う「ファッサ渓谷(ヴァルディファッサ)」。氷河を抱くドロミテの女王、マルモラーダや独特な扇形をしたチベッタを望むこの谷の景観のすばらしさは、すでに紹介したとおりだ。

もうひとつはセラ山群から西北側、ボルツァーノ方面に向かって延びる「ガルディナ渓谷(ヴァルガルディナ)」。名峰カテナッツォやシリアール、サッソルンゴを挟むように大きくうねりながら続き、遠くオーストリア方面の氷河までもが見る者の目を楽しませてくれる。ボルツァーノ地区からアルトアルジェ地区へ、つまり南チロルからドロミテへといたる景観である。スーパーセラロンダの後半は、このガルディナ渓谷から始まる。

バディアスキー場から望む眺望。セラ山群とガルディナ峠を隔てて調和するプエツ山群が織り成す風景はすばらしい

バディアスキー場から望む眺望。セラ山群とガルディナ峠を隔てて調和するプエツ山群が織り成す風景はすばらしい

一般的なセラロンダコースから外れ、セラ峠から西へ西へと向かう。ヴァルガルディナスキー場のサッソルンゴコースをサンタクリスチーナ村まで。さらにセチェーダからオルティゼー、アルプディシウジ(シウジ高原)へとルートを延ばし、一部はシャトルバスを利用してふたたびサッソルンゴコースに。そして、セルバ村まで一気に滑り込めば、ようやく通常のセラロンダコースに戻ってくる。

ここでゴンドラに乗れば、ガルディナ渓谷の最高地点、ガルディナヨッホ(2、121㍍)へひと息に運んでくれる。一度、離れたセラ山群が、ふたたび近づいてくるその迫力は圧巻。ここから眺めるサッソルンゴも、また格別なものである。

ガルディナヨッホからコルフォスコ村、コルバラ村へとセラロンダは続いていく。このあたりは緩斜面がひたすら続くので、ノンストップのクルージングスキーを楽しんでもらいたい。針葉樹の林や奇岩サッソンガー、晴れた日なら昼すぎから夕刻にかけて真紅色に染まっていくサッソ・デラ・クローチェ、ラバレッラ、コントリネスの3山が織り成す息を飲むほどの風景に出会えることだろう。ガルディナヨッホ付近から望むサッソルンゴやシリアール、そして、このバディア渓谷の3山の夕景は、一度は見て心に刻んでおきたい風景である。

ひっそりとした寒村、コルバラに滑り込めば一般的なセラロンダは、それで終了。アラッバからスタートしたのならば、さらにゴンドラ、リフトを乗り継いで、最後の滑走をあと数本滑ることになる。

バディア渓谷のすばらしい風景に出会うには、通常のセラロンダコースから離れる必要がある。コルバラ村からセラ山群を北へ離れ、見晴らしのよいコルアルト地区を滑走。リフトに乗ってアルタバディアのワールドカップコースへ。ワールドカップコースならではの滑り応えを楽しみながら滑っていくと、ひっそりとしたラヴィラの村へと到着する。そこは、東側からファルツァレーゴ峠、ヴァルパローレ、アルメンタローラ、サンカシアーノと続いてくる谷と、広大なバディア渓谷が交わる地でもある。

ラヴィラを起点にバディア渓谷と平行にスキーコースは続き、エンロサディーラ現象が美しいサッソ・デラ・クローチェと、同じ名前の教会があるバディア村まで誘ってくれる。この白い教会は標高2、045㍍に位置し、サッソ・デラ・クローチェの山肌をバックにたたずむ。地元の信仰深い人々のためのカトリック教会であり、かつては旅人を受け入れるホスピスとしても機能していた。

エンロサディーラ現象とは、カーボナイトやマグネシウム、マンガンなど豊富なミネラル鉱物を含んだドロミテの岩肌に太陽の光が当たることで、うっすらとしたオレンジからピンクや紫、そして真紅へと岩が染まる現象。日没前後の短い時間にだけ見ることができるドロミテを象徴する風景である。かつてカテナッツォのラウリン王国の王女ラディーナが、ラテマールの王子に見そめられて妻にされてしまったとき、美しい薔薇の園があるためにそんな悲劇が生まれたのだと、国王は薔薇に咲かないように命じた。だが、夕刻だけは咲かないように命じていなかったために、岩壁を真紅に染める美しい夕景をエンロサディーラと呼ぶようになったという伝説を持つ。

エンロサディーラは、晴れた日にセラロンダをすれば誰でも出会うことのできる風景。だが、スーパーセラロンダでサッソ・デラ・クローチェまで足を伸ばすことで、その美しさはひときわ際立つ。近くには真紅に染まるサッソ・デラ・クローチェ、振り返ればセラ山群と自分たちが滑りながら見てきた数々の名峰や渓谷。遠くには墨絵のように雲海に浮かぶマルモラーダや恐竜の背中のようなサッソリガイスを象徴とするガイスラー山群。それはスキーヤーなら生涯で一度は見たいドロミテならではの絶景である。

真紅に染まった岩壁をバックに建つサッソ・デラ・クローチェ教会。スーパーセラロンダでなければ出会うことのできない風景だ

真紅に染まった岩壁をバックに建つサッソ・デラ・クローチェ教会。スーパーセラロンダでなければ出会うことのできない風景だ

私にとってのドロミテ3大エンロサディーラは、美しいカテナッツォ(カレッツァ村)、チベッタ(アレゲ村)、そしてこのサッソ・デラ・クローチェ(バディア村)である。これらの風景は皆、スーパーセラロンダでなければ出会えないもの。そんな美しい風景、そして圧倒的な滑走距離や標高差。それが世界遺産ドロミテ山群に私が深く心を奪われる理由だ。こうして北イタリアのドロミテから約2万㌔も離れた日本にいる今も、ドロミテ山群の風景の数々は、しっかりと心に刻まれている。